〈ホタルの飼育方法〉
産卵箱
左:産卵箱
中央:産卵箱の底に敷いたコケ
右:産卵箱の底で腹を見せて死んでいるゲンジボタルのメス
・産卵箱はきれいな水で洗い、太陽に当てて日光消毒をする。
・底にはコケを敷き、上からコケ玉を吊り下げる。
・コケに霧を吹きつけて常に湿らせておく。
・産卵箱にホタルの成虫メス1匹に対してオス2~3匹放つ。
・ホタルはコケに卵を産み付ける。
・卵らふ化までは大体20日~30日を要する。ふ化直後の幼虫は0.5mmほどの大きさで肉眼では見えにくい。
・産卵箱の下にふ化した幼虫の受け皿を取り付け、深さ3~5cmほど水を張っておく。
・ふ化した幼虫は産卵箱の底の網を潜り抜けて、受け皿に落ちる。
・受け皿の幼虫は順次幼虫飼育バットへ移す。
幼虫飼育バット
・幼虫飼育バットは、ふ化した幼虫を終齢までの8~9か月間(6月末ごろから翌年の3月~4月ごろま
で)育てる装置である。
・貯水槽からポンプで水を汲み上げ、ろ過槽をくぐらせて鉄分などの不純物を取り除いた後、バットに流
し込み、循環させて常に水が流れている状態にしてある。
(ゲンジの幼虫はきれいな水の流れる流水域に、ヘイケの幼虫は田んぼなどの止水域に住む)
・エサはゲンジの幼虫にはカワニナを、ヘイケの幼虫にはタニシをほぼ毎日与える。
・幼虫が1齢~4齢まではカワニナやタニシの稚貝を、稚貝が入手できないときは大きくなった貝をつぶし
て与える。5齢iになるとつぶさずにそのまま与える。
(1齢=ふ化直後の0.5mm~5mmまで/2齢=大体5mmほど/3齢=7mmほど/4齢=10mmほど/
5齢(終齢)=15mmほど)
・ つぶした貝は腐敗が早く、水を汚したり、ガスを発生させるなど幼虫の生存に害を及ぼすので1日程度
で取り除く。
・バットの中の貝殻は捨てない。中に幼虫が入っていることがある。
・幼虫は成長の過程で大きさに差が生じる。大きくなったのは別のバットへ移す。分別することによって
成長の遅れた幼虫も十分エサを食べることができ、成長を取り戻すことができる。
・3月ごろになると終齢まで成長する。その頃を見計らって放流する。
ろ過槽
・ろ過槽に砂袋やフイルターを詰めてろ過した水を幼虫飼育バットへ送る。
屋内ビオトープ
・屋内ビオトープは終齢幼虫を放つために作ったが、カワニナやタニシの飼育にも併用している。
・カワニナやタニシは死滅したり、寒くなると土にもぐったりして姿を消し、エサの確保に事欠くようにな
るため飼育しておくのが無難である。
ホタル池&人工水路
ホタル池 人工水路
・ホタル池や人工水路でもカワニナやタニシを飼育しているが、冬が近づき水温が下がると泥にもぐって
ほとんど姿が見えなくなり、採取は困難になる。
終齢幼虫の放流
3月末から4月はじめに、終齢幼虫を放流する。
幼虫は土手をはい登って、やわらかい土に穴を掘ってマユ室をつくり、その中で2か月近くを過ごす。
その間にサナギになり、5月末から6月初めの気温が15℃~20℃くらいになる頃に、穴から出て夜空に光
を放つ。
成虫となったホタルは交尾の後、苔の生えた湿気のあるところに集団で卵を産み付ける。
成虫は1週間から10日のはかない命である。